
フロン類は、オゾン層破壊や地球温暖化に深刻な影響を与える化学物質です。特に、業務用冷凍空調機器からのフロン漏えいは、温室効果ガス排出量の増加につながる重大な環境問題となっています。このような背景から、2015年4月に「フロン排出抑制法」が施行され、機器の管理者に対して定期点検が義務付けられました。この法律の目的は、フロン類の漏えい防止と適切な回収・破壊を促進し、地球環境の保護を図ることにあります。
【具体例】
大手スーパーマーケットチェーンA社では、店舗で使用する冷凍・冷蔵ショーケースからの年間フロン漏えい量が約100t-CO2でしたが、定期点検の実施により50%以上削減に成功しました。
2. フロン点検の対象機器と点検頻度
フロン点検の対象となるのは、業務用の空調機器、冷凍・冷蔵機器で、フロン類が充填されているものです。点検頻度は機器の種類と規模によって異なり、フロン充填量が7.5kg以上の第一種特定製品は3ヶ月に1回以上の簡易点検と、年1回以上の定期点検が必要です。一方、7.5kg未満の機器は3ヶ月に1回以上の簡易点検のみが求められます。これらの点検は、専門知識を持った有資格者による実施が推奨されています。
【具体例】
ホテルB社の場合、客室用パッケージエアコン(充填量3kg)には3ヶ月ごとの簡易点検を、宴会場の大型空調機(充填量10kg)には年1回の定期点検に加えて3ヶ月ごとの簡易点検を実施しています。
3. フロン点検義務違反の罰則と企業の対応策
フロン点検義務違反に対する罰則は、フロン排出抑制法に基づき厳格に定められています。違反した場合、企業には50万円以下の罰金が科せられる可能性があり、さらに法人に対しては両罰規定が適用され、より高額な制裁金が課される場合があります。また、定期点検の未実施や記録の保存義務違反に対しては、都道府県知事からの指導・助言、さらには勧告・命令といった行政処分が行われることもあります。企業としては、このような法的リスクを回避するため、専門的な知識を持つ人材の育成や、点検記録の確実な保管体制の構築が不可欠です。特に、機器の管理者には、点検実施の責任者を明確に指定し、定期的な研修やマニュアルの整備を通じて、確実な点検体制を確立することが求められています。
具体例:
大手スーパーマーケットチェーンAでは、各店舗に点検責任者を配置し、毎月の点検スケジュールを本部で一括管理。専用のアプリを導入し、点検記録のデジタル化と自動通知システムを構築することで、点検漏れを防止しています。
フロン排出抑制法における点検義務は、地球環境保護と企業のコンプライアンス体制の両面で重要な意味を持っています。特に近年、ESG投資の観点からも環境配慮への取り組みが注目される中、フロン管理の適切な実施は企業価値向上にも直結します。各企業は、法令順守はもちろん、自社の環境方針に基づいた独自の管理体制を構築し、従業員教育や最新の点検技術の導入を積極的に進めることが望ましいでしょう。また、点検業務を外部の専門業者に委託する場合でも、管理責任は機器所有者にあることを認識し、確実な履行確認と記録保管を行うことが重要です。継続的な改善と見直しを行いながら、持続可能な点検体制を確立することが、企業の長期的な発展につながります。
エアコンフロン点検